「はい、これ台本ね。では◯ページの・・・」
演技なんて一度もしたことがない私が、その場で台本を渡されて即興で演じる。お姫様、太后様、敵国のいじわるな王女様、盗賊、酒場のおばあさん。いろんな役を順番に演じていきます。それが、先日受けたミュージカルのオーディションでした。
会場の前に立った瞬間、心臓がバクバクして、本気で帰りたくなりました。でも同時に、こんなにわくわくしたのは久しぶりでした。今日は、その体験を通して気づいた「感情を出し切る」ということについて、お話しさせてください。
未知の世界に飛び込んだ理由
きっかけは単純でした。ミュージカル、前からやってみたかったんです。
やりたいと思ったことは全部やる!最近そう決めています。
でも、演技は全くの未経験。会場に向かう道すがら、頭の中をよぎったのは「鼻で笑われたらどうしよう」という怖さでした。自分がその場でどんな感じになるのか、私自身にも分からない。
それでも、行くと決めました。もし結果がボロボロだったとしても、そこには知らなかった自分がいる。だったらやってみよう。大切なのは結果じゃない。そう思えたから、逃げずに会場のドアを開けました。
試験は、その場で台本を渡され、いろんな役を即興で演じるというもの。しおらしいお姫様になったかと思えば、次の瞬間には威厳あふれる太后様。敵国の王女様で高飛車な声色を作り、盗賊になって声を荒げ、酒場のおばあさんはしわがれた声で恨みつらみを言う。
役が変わるたびに、自分の中の知らない扉が開いていくようでした。
演じることで、心が丸ごと解放された日
結果からお話しすると、すんっごく楽しかったんです。心の底からわくわくしました。しかも「あれ、私、うまいかも!?」と気づく瞬間まであって。実際に合格をいただきました(稽古のスケジュールが合わず、今回は辞退することにしましたが)。
でも、この経験で一番大きかったのは、合格そのものではありません。演じるという行為を通じて、怒り、悲しみ、喜び、驚き、時には色気。そういう感情を、思いっきり解放できたことでした。
普段の私たちは、感情をここまでオープンにすることはありません。特に怒りや悲しみのような負の感情は、蓋をして、制御して、なるべく人前には出さないようにしています。それが大人のマナーだと思って生きてきました。
でも演技という擬似体験の中でなら、その蓋を外していい。むしろ外さないと役にならない。台本という設定に守られながら、普段しまい込んでいる感情を思いきり外に出す。あの時間は、自分の感情を洗い流してもらったような感覚でした。
感情を解放するスイッチを入れるために「演じる場」をつくる。それって、案外いい方法なのかもしれません。
声に感情を乗せる人が、伝え上手な人
この気づきは、日々の伝え方にもそのままつながっています。
普段の会話や仕事の場面でも、伝わる伝え方の鍵は「感情」です。心をのせた声は人の心を動かし、行動を喚起する力を持っています。同じ言葉でも、感情がのった声とのっていない声とでは、届き方がまるで違うんです。
ただ、感情の乗せ方が分からない人が多いのも事実です。
大切なのは、嘘をつくことではありません。場面に応じてスイッチを入れる。会議では落ち着いた声、感謝を伝えるときは温かい声、注意するときは真剣な声。オーディションで王女から盗賊に切り替えたように、日常でも声の使い分けはできます。
明日、誰かに「ありがとう」と伝えるとき。いつもより少しだけ、その気持ちを声に乗せてみてください。それだけで、相手に届く熱量が大きく変わります。
この声の使い分けが上手な人こそ、人の心をつかむ、伝え上手な人なんだと思います。
感情を出し切った先にあるもの
あの日、会場の前で感じた心臓のバクバクは、もう覚えていません。覚えているのは、役になりきって声を出し切った瞬間の解放感だけです。
あなたの中にも、まだ出し切っていない感情があるかもしれません。声のcampusでは、そんな心の声を一緒に解き放つ場をつくっています。まずは小さなひとことから、感情を声に乗せてみませんか。