会場が、息を呑んだ。
先日、堀ちえみさんの講演を聴く機会がありました。
話し始めた瞬間から、ただならぬ空気が漂っていました。言葉が、ゆっくり、ゆっくり届いてくる。でもその一言一言に、何かが詰まっていて、誰もがじっと前を向いて聴き続けていました。
聴き終えたとき、胸の奥がじわっと熱くなっていました。
生きることを、決めた
2019年、堀ちえみさんは舌がんの宣告を受けます。
「喋れない、歌えないなら、何も残らない。」
手術を拒否する意思を家族に伝えたそうです。そのとき、当時16歳だった娘さんが、泣きながらこう言ったのです。
「お母さん、生きて。」
その言葉が、すべてを変えました。
生きることを決め、手術へ。舌の6割を切除する大手術でした。
舌根——喉仏の上あたりの根元から含めて6割ですから、見えている部分はほぼなくなる。太ももの肉を移植して舌をつくったけれど、神経は通っていないから動かない。
その状態から、言葉を取り戻していくリハビリが始まりました。
1音1音が、奇跡
私たちが何気なく話している言葉は、舌、頬の内側、唇の形、そして息の摩擦——体のあちこちが精密に連携して、はじめて音になります。
サ行とタ行の違いも、ほんのわずかな舌の位置の差で生まれます。
堀ちえみさんは、動かない舌を腹筋のように舌根に力を入れて動かしながら、一語一語の音を言語聴覚士さんとオーダーメイドでつくっていきました。
小さい頃からずっと言えていた言葉が、通じない。そのリハビリが、どれほどきつかったか。
その話を聴きながら、気づきました。
私たちが「話す」という行為は、奇跡の連続だということに。
1音1音、体の無数の動きが折り重なって、はじめて言葉として放たれる。それが、これほど当たり前にできていたこと自体が、どれだけ尊いことかを。
1人の命をつなぐ、リレー
堀ちえみさんの話を聴きながら、私の心に浮かんだイメージがありました。
一人の命をつないでいく、リレーです。
家族は「生きる決意」を渡した。 医療チームは「命」を渡した。 言語聴覚士さんは「言葉」を渡した。 ボイストレーナーが「歌」を渡した。 そしてファンのみなさんが「生きる喜び」を渡した。
誰か一人が欠けても、2023年2月のコンサートはなかった。「おかえり!」とファンが喜ぶあの舞台は、なかった。
誰かの言葉が、誰かの命をつなぐことがある。声が、人の人生を変えることがある。そのことを、静かに、深く実感しました。
ゆっくりでも、伝わる
堀ちえみさんは講演の間、1音1音を選びながら、かなりゆっくり話していました。
でも、会場は誰も退屈していませんでした。むしろ、誰もが前のめりになって聴いていました。
ゆっくり、間をたっぷり開けても、伝わる。いや、むしろゆっくりだからこそ、深く伝わっていました。
娘さんのセリフを、何度も繰り返していました。
「お母さん、生きて。」
そのたびに、会場の空気がぴんと張りつめました。
情景を、情感たっぷりに届ける。セリフを、余韻とともに重ねていく。それだけで、聴いている人全員が同じ場面に引き込まれていきました。
情報を増やすことより、1つの言葉を丁寧に届けること。間と余白をたっぷり取ること。
そこに、届けようという想いがあれば、言葉は必ず人の心に届く——そのことを、身をもって見せてもらいました。
言葉は、宝物であり贈り物
声に出すことは、当たり前じゃない。
体のあちこちが、今この瞬間も頑張って動いてくれているから、言葉が出せる。1音1音、奇跡が折り重なって放たれている。
だから、声を大切に。言葉を大切に。
あなたが誰かに伝えようとしているその言葉は、それだけで宝物です。
上手く話せなくていい。流暢でなくていい。ゆっくりでも、たどたどしくても、届けようとする想いがあれば、必ず伝わる瞬間がやってきます。
あなたの声は、奇跡です。
1音1音、1語1語、体のあちこちが今この瞬間も動いてくれているから出せる声。それは、生まれ持った唯一無二の宝物です。
誰かと比べなくていい。あなたの声は、もともと最高なんです。
もしあなたが、自分の声にコンプレックスや悩みを抱えているなら、それは声のせいじゃない。ただ、間違った出し方をしていて、本来の声がまだ眠っているだけ。
生まれ持った宝物の声は、ちゃんとそこにあります。「声の使い方」と「心の乗せ方」。このふたつを知るだけで、あなたの声は本来の力を発揮します。
声のcampusで、その声を一緒に解き放っていきましょう。
まずは公式LINEから、気軽に話しかけてみてください。