1音1音が、奇跡。堀ちえみさんの講演が教えてくれた「言葉の本当の価値」

2026.06.30
Todays Voice

会場が、息を呑んだ。

先日、堀ちえみさんの講演を聴く機会がありました。

話し始めた瞬間から、ただならぬ空気が漂っていました。言葉が、ゆっくり、ゆっくり届いてくる。でもその一言一言に、何かが詰まっていて、誰もがじっと前を向いて聴き続けていました。

聴き終えたとき、胸の奥がじわっと熱くなっていました。

生きることを、決めた

2019年、堀ちえみさんは舌がんの宣告を受けます。

「喋れない、歌えないなら、何も残らない。」

手術を拒否する意思を家族に伝えたそうです。そのとき、当時16歳だった娘さんが、泣きながらこう言ったのです。

「お母さん、生きて。」

その言葉が、すべてを変えました。

生きることを決め、手術へ。舌の6割を切除する大手術でした。

舌根——喉仏の上あたりの根元から含めて6割ですから、見えている部分はほぼなくなる。太ももの肉を移植して舌をつくったけれど、神経は通っていないから動かない。

その状態から、言葉を取り戻していくリハビリが始まりました。

1音1音が、奇跡

私たちが何気なく話している言葉は、舌、頬の内側、唇の形、そして息の摩擦——体のあちこちが精密に連携して、はじめて音になります。

サ行とタ行の違いも、ほんのわずかな舌の位置の差で生まれます。

堀ちえみさんは、動かない舌を腹筋のように舌根に力を入れて動かしながら、一語一語の音を言語聴覚士さんとオーダーメイドでつくっていきました。

小さい頃からずっと言えていた言葉が、通じない。そのリハビリが、どれほどきつかったか。

その話を聴きながら、気づきました。

私たちが「話す」という行為は、奇跡の連続だということに。

1音1音、体の無数の動きが折り重なって、はじめて言葉として放たれる。それが、これほど当たり前にできていたこと自体が、どれだけ尊いことかを。

1人の命をつなぐ、リレー

堀ちえみさんの話を聴きながら、私の心に浮かんだイメージがありました。

一人の命をつないでいく、リレーです。

家族は「生きる決意」を渡した。 医療チームは「命」を渡した。 言語聴覚士さんは「言葉」を渡した。 ボイストレーナーが「歌」を渡した。 そしてファンのみなさんが「生きる喜び」を渡した。

誰か一人が欠けても、2023年2月のコンサートはなかった。「おかえり!」とファンが喜ぶあの舞台は、なかった。

誰かの言葉が、誰かの命をつなぐことがある。声が、人の人生を変えることがある。そのことを、静かに、深く実感しました。

ゆっくりでも、伝わる

堀ちえみさんは講演の間、1音1音を選びながら、かなりゆっくり話していました。

でも、会場は誰も退屈していませんでした。むしろ、誰もが前のめりになって聴いていました。

ゆっくり、間をたっぷり開けても、伝わる。いや、むしろゆっくりだからこそ、深く伝わっていました。

娘さんのセリフを、何度も繰り返していました。

「お母さん、生きて。」

そのたびに、会場の空気がぴんと張りつめました。

情景を、情感たっぷりに届ける。セリフを、余韻とともに重ねていく。それだけで、聴いている人全員が同じ場面に引き込まれていきました。

情報を増やすことより、1つの言葉を丁寧に届けること。間と余白をたっぷり取ること。

そこに、届けようという想いがあれば、言葉は必ず人の心に届く——そのことを、身をもって見せてもらいました。

言葉は、宝物であり贈り物

声に出すことは、当たり前じゃない。

体のあちこちが、今この瞬間も頑張って動いてくれているから、言葉が出せる。1音1音、奇跡が折り重なって放たれている。

だから、声を大切に。言葉を大切に。

あなたが誰かに伝えようとしているその言葉は、それだけで宝物です。

上手く話せなくていい。流暢でなくていい。ゆっくりでも、たどたどしくても、届けようとする想いがあれば、必ず伝わる瞬間がやってきます。

あなたの声は、奇跡です。

1音1音、1語1語、体のあちこちが今この瞬間も動いてくれているから出せる声。それは、生まれ持った唯一無二の宝物です。

誰かと比べなくていい。あなたの声は、もともと最高なんです。

もしあなたが、自分の声にコンプレックスや悩みを抱えているなら、それは声のせいじゃない。ただ、間違った出し方をしていて、本来の声がまだ眠っているだけ。

生まれ持った宝物の声は、ちゃんとそこにあります。「声の使い方」と「心の乗せ方」。このふたつを知るだけで、あなたの声は本来の力を発揮します。

声のcampusで、その声を一緒に解き放っていきましょう。

まずは公式LINEから、気軽に話しかけてみてください。

藤島あやの
PROFILE
藤島あやの
声のcampus 代表

声のcampus代表。想いを届ける司会・ナレーション、対話で人と組織をつなぐ企業研修・ファシリテーションを軸に、ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師、経営者インタビューメディア「コントリ」インタビュアーとしても活動中。ビジョンは「声の力で、誰もが自分らしくいきいき輝いて働く社会の実現」。人が定着する組織に必要なのは「理念の浸透」と「相互理解」。そのために必要なのが、聴く・認める・伝えるという”対話の文化”。一人ひとりが主体的に力を発揮し、互いに認め合い助け合える、強く持続的な組織をつくる。すべては、声から始まる。

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