「好きにならなきゃ」と思えば思うほど、なぜか気持ちがすっと離れていく。そんな経験、ありませんか。
わたしにはずっと、そういう感覚がありました。相手は、子どもです。
今日は、そこに隠れていた「こうあるべき」の正体と、先日のBBQパーティで起きた小さな出来事から気づいたことを、あなたと共有したいと思います。
「子どもはどうするの」にうまく答えられなかった頃
わたしには、子どもがいません。できなかったのではなく、心から欲しいと思ったことが、一度もないのです。
35歳くらいまで、そんな自分にどこか引け目を感じていました。友人や親戚から「子どもはどうするの」と聞かれるたび、うまく答えられずにいたのです。わたしと同世代の女性は、まだまだ子どもを産む人が多く、周りの友人もほとんどが母親でした。子なし夫婦を指す「DINKS」という言葉が広まってきた今も、少数派であることに変わりはありません。
もともと子どもは好きな方でした。動物も子どもも好きで、最初に勤めた会社は、子ども英会話教室を運営する会社だったほどです。
なのに、年を重ねるごとに、子どもへの苦手意識だけが強くなっていきました。
周りの声に耳を傾けるほど、自分が本当はどう感じているのか、わからなくなっていく。以前「ああしたほうがいい」に振り回されていませんかという記事にも書きましたが、あのときと同じ感覚が、ここにもありました。
「子どもが欲しいと思うようにしなきゃ」。そう自分に言い聞かせている自分がいました。かわいい子を見ては「あ、欲しいと思えるかも」と感じる瞬間もあったのです。でも仕事は楽しいし、やりたいこともたくさんある。頭に浮かぶのはデメリットばかりで、それを超えるメリットが見つかりませんでした。
「わたしは女性として、母性が人より少ないのかもしれない」
そんなふうに、自分で自分にレッテルを貼っていたのです。以前「できない自分」にずっと縛られていた話を書きましたが、あのときと似た構造が、ここにもありました。
36、7歳を超えたあたりから、周りに聞かれることが減り、自分の中でも、すっと吹っ切れました。ちょうど、独立を決意した頃のことです。
抱っこした瞬間にあふれてきたもの
先日参加したBBQパーティで、暑さにぐったりしていた小さな子を抱き上げました。「大丈夫だよ」「よく頑張ったね」「えらいね」。そう繰り返し声をかけると、その子はふっと力を抜いて、わたしに身を委ねてくれたのです。
安心しきったその重みを腕に感じたとき、じんわりと胸が熱くなりました。あとで撮ってもらった写真を見せてもらって、驚きました。そこに写っていたのは、愛情のかたまりみたいな自分だったからです。
苦手だったはずなのに。ずっと避けてきたはずなのに。
そこでようやく気づきました。わたしは、子どもが嫌いになったのではありません。嫌いになろうとしていたのです。「好きにならなきゃ」「そう思えるようにならなきゃ」という力みが、もともとあった気持ちに、静かに蓋をしていたのだと思います。
今でも、子どもが特別大好き!というわけではありません。可愛いな〜おもろいな〜とか感じますけど、なんというか、大人と変わらない。「子どもだから」という色眼鏡がない。ただ、人は人。それでいいと、今は思えます。
「好きになれ」がいちばん届かない理由
この構造は、会社の中にも、そのまま存在しています。
一方的に「会社を好きになれ」「もっと会社のためにやれ」と伝えても、その言葉は届きません。むしろ、「そうなれない自分」に本人は苦しくなり、居心地が悪くなるだけ。私も過去にそんな経験があります。心がついていってないと、「自分はここに居ちゃいけないんだ」と感じてしまうんですよね。
先にすべきなのは、好きにさせることではなく、その人自身を理解し、受け止めること。「こうであるべき」「こうしなさい」という圧は、本来その人の中にあった想いに、静かに蓋をしてしまいます。そこさえ外してあげられれば、人はもともと、泉のように愛情もエネルギーも湧き出てくる存在だと、わたしは信じています。
明日からできることは、シンプルです。相手に何かを求める前に、まず相手をまるごと理解しようとすること。実はたったそれだけで、相手は自然と、自ら行動を起こせるようになるのです。
誰にでも注ぐ先がある
わたしには子どもがいません。でも、今やっていることの先には、子どもたちの未来を変える希望が、たしかにある。
声で、愛情や優しさが溢れる世界をつくる。学生や子どもたちが、目を輝かせて生きていける社会をつくる。そのために変わるべきは、大人の方です。
私たちがそうであるように、子どもたちは、周囲の大人たちの姿を見て成長していきます。私たち大人がまず自分を輝かせることが、子どもたちを輝かせるのです。
ママたちが、目の前のわが子に愛情を注ぐように。わたしは、そのエネルギーを、たくさんの若い人たちに注いでいきたいと思っています。どちらが尊いという話ではなく、注ぐ先が違うだけ。それが、わたしに与えられた役目なのだと思っています。生き方は、自分で決めていい。
あなたの会社にも、まだ本音に蓋をしたままの人が、いるかもしれません。好きになれと伝える前に、まずその人を、まるごと理解することから始めてみませんか。
声のcampus代表。想いを届ける司会・ナレーション、対話で人と組織をつなぐ企業研修・ファシリテーションを軸に、ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師、経営者インタビューメディア「コントリ」インタビュアーとしても活動中。ビジョンは「声の力で、誰もが自分らしくいきいき輝いて働く社会の実現」。人が定着する組織に必要なのは「理念の浸透」と「相互理解」。そのために必要なのが、聴く・認める・伝えるという”対話の文化”。一人ひとりが主体的に力を発揮し、互いに認め合い助け合える、強く持続的な組織をつくる。すべては、声から始まる。