今朝も、学生の面接トレーニングをしていました。
フィードバックで伝えることは、結局いつも同じです。「もっと想いを伝えていいんだよ」。事実しか話さない人が多いんです。「サークルでまとめ役として頑張りました」「アルバイトではお客様の立場で考えていました」。間違ってはいません。でも、事実だけでは記憶には残らない。
これ、学生だけの話じゃないんですよね。大人も、経営者も、まったく同じ。
今日は、事実に「温度」を足すだけで、驚くほど伝わるようになる話をします。
事実は流れる 温度は残る
実績をどれだけ並べても、聞いている人の心には引っかかりません。数字も肩書きも、それ自体はただの情報だからです。
でも、そこに「なぜやったのか」「その経験がいまの自分にどうつながっているのか」を一言そえるだけで、話が急に立ち上がってきます。相手の目の色が変わる瞬間って、たいていここなんですよ。
わたしはEQトレーナーとしても活動しています。EQは「感情の知能」と訳されます。むずかしそうに聞こえますが、やっていることはシンプルです。人が何かを決めて動くとき、その手前には必ず感情、つまり心の動きがある。その動きに自分で気づいて、うまくつきあっていく力のことなんです。
人は、情報で納得はしても、感情でしか動きません。以前、感情こそが人を動かすという話を書きました。事実をどう扱うかについては、事実と自分の解釈を分ける話も。あわせて読んでもらえたらうれしいです。
伝えるときに大事なのは、正しさよりも、温度。
想いです!しか言わない社長
先日、経営者インタビューメディア「コントリ」で取材をさせていただいた丸山社長と、数名でボウリングに行ってきました。
丸山社長は、プロ級の腕前です。わたしはというと、スコアは100を切るレベルの、筋金入りのへたっぴです。
上手な人と行くと、たいていは技術の話になりますよね。「ここを狙うといい」「フォームはこう」。ところが丸山社長は、何を聞いても答えがひとつだけでした。
「想いです!!!」
絶対にど真ん中に行く。そう信じ切って投げれば、行く。ボールは投げるものじゃなくて、置くだけでいい。振りかぶらなくていい。力を抜いて、まっすぐ進むと信じて、ただ置く。そうすれば、勝手に転がっていくよ、と。
半信半疑で、言われた通りにやってみました。そうしたら、不思議なことに、ストライクが続いたんです。あまりに続くので、思わず笑ってしまいました。
狙いを変えたわけでも、フォームを直したわけでもありません。変えたのは、「行く」と信じ切ったこと。それだけなんです。
人生も、同じなんですよね。できると信じ込んだ人のところに、結果はあとからついてくる。
人が辞めない会社がやっていること
というわけで、ボーリングのピンも、人の心も、動かすのは『想い』なんです。(笑)
数々の経営者インタビューを通して、人が辞めない会社には、はっきりした共通点があります。
それは、「理念が、ちゃんと浸透していること」です。
組織の立て直しに成功している会社も、まず最初に手をつけるのはここでした。制度でも評価でもなく、理念から。
理念、つまり「想い」です。この会社は何のためにあるのか。なぜこの仕事をするのか。わたしたちはどこへ向かうのか。その想いが一人ひとりの中で生きているとき、人は自ら動けるようになり、仲間意識から助け合いが生まれ、人が簡単には離れなくなるのです。
反対に、数字の目標や指示だけが降ってくる組織では、人は温度を感じられません。事実しか語らない面接と、どこか似ていますね。
明日からできる一言の足し方
むずかしいことはいりません。実績や指示を伝えるとき、あなたの想いを加えてみてください。
その時どんな想いでしたか?
誰のため?何のためにそれをやるのですか?
「来期は新規を20社」ではなく、「うちの技術をまだ知らない人に届けたいから、来期は新規を20社ふやしたい」。たった一言、想いがのるだけで、聞いている人の受け取り方が変わります。
声には温度がのる
同じ言葉でも、そこに想いがこもっているかどうかは、聞いている人にちゃんと伝わってしまいます。ごまかせないんですよね、声って。
事実は、正確に。そこに、あなたの想いを、ひとしずく。
事実+想い で1セットです。
経営者であるあなたの声から、その会社の温度は決まっていきます。まずは今日、誰かに何かを伝えるとき、「なぜそれを大事にしているのか」を一言だけ、足してみませんか。
そこから、人が集まって、離れない組織づくりが、静かに始まっていくはずです。
声のcampus代表。想いを届ける司会・ナレーション、対話で人と組織をつなぐ企業研修・ファシリテーションを軸に、ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師、経営者インタビューメディア「コントリ」インタビュアーとしても活動中。ビジョンは「声の力で、誰もが自分らしくいきいき輝いて働く社会の実現」。人が定着する組織に必要なのは「理念の浸透」と「相互理解」。そのために必要なのが、聴く・認める・伝えるという”対話の文化”。一人ひとりが主体的に力を発揮し、互いに認め合い助け合える、強く持続的な組織をつくる。すべては、声から始まる。