ある日、知人と話していたら、会うや否や、いきなり怒りの言葉をぶつけられました。「こちらにも事情があるんですよ!暇じゃないんだから!」。
えっ、そんなこと一言も言ってないのに。ぽかんとしてしまいました。
同じ日の夜、今度は母親から。刃のような言葉が、ひたすらLINEで10通近く届きました。
一日のうちに、まったく違う相手から、一方的な怒りを受け取ったんです。
そしてこの日は、8月15日。終戦記念日。偶然にしては出来すぎている。
人生は、必要なタイミングで、必要なことしか起こらない。大切なことに気づくチャンスが届いたんだ、と思いました。
今回は、今を生きる私たちが、日々争わずに過ごすために。そんなお話です。
怒りの正体は身勝手な解釈
「こんなにやってあげてるのに!」
「もっと〜してほしいのに!」
「どうせ分かってくれていないだろう」
そんなふうに感じること、あなたにもあるはずです。もちろん私だってあります。そりゃありますよ(笑)
そう感じてしまうのは仕方ない、人間らしくていいと思います。大事なのは、そのあとすぐに気づけるかどうか。
実はこれ、すべて自分の中の解釈なんです。
相手に対する思い込みや、もっと認めてほしいという自己欲求。そんな解釈を根拠に、怒りが生まれてしまいます。
つまり怒りは、自分で選んでいるんですよね。
誰かに押しつけられているのではありません。自分の思い込みが、自分の中で火をつけているだけなんです。
わたしにぶつけられた怒りも、きっと同じでした。相手には相手なりの解釈があった。それは、わたしにはどうにもできないことです。
二次感情の奥にある本音
その夜、母からの言葉を読みながら、悲しくてたまりませんでした。大事な話を、精いっぱい言葉を選んで、想いを込めて伝えたつもりだったけど、まったく違う受け止め方をされてしまったからです。
でも、少し落ち着いてから、ふと気づきました。
これだけの言葉をぶつけてくるのはきっと、それだけ怖くて不安で、苦しい。それを誰にも言わず、溜め込んできたんだな、と。
前に「わたしは、ゴミのような人間だ」そう思っていた頃の話で、母が弱音も涙も見せない強い人だと書きました。日頃、感情を封じ込める人ほど、限界がきたときに一気にあふれます。今回もきっと、そうだったんだと思います。
という、私の”解釈”です。
怒りの下には、たいてい「寂しい」「悲しい」「悔しい」「不安」が隠れています。でも人は、その一次感情に自分でも気づけないまま、怒りという二次感情だけを相手にぶつけてしまいがちです。
本当の気持ちと言葉が一致していないから、自ら放ってしまった言葉に、あとから「やってしまった」と、自己嫌悪に陥るんです。
怒ってはいけないということではありません。むしろ怒っていいんです!怒りという感情には、自分が大切にしていることや、過去の経験といった自分らしさに気づくための宝物が隠れているから、消そうとしなくていいんです。私も最近怒るようになりましたよ〜(笑)
でも、そのまま相手にぶつけてしまっては、自分の人生を自分で叩き割ってしまうようなものです。
言葉は刃になる
言葉は、取り消せません。一度放たれた言葉は、相手の心にも、自分自身の心にも、傷として残ります。
だからこそ、日頃から大切にしたいことがあります。
一つ、言葉を丁寧に届けること。
二つ、相手の話をちゃんと聴くこと。
三つ、怒りを感じたら、その裏にある自分の一次感情をつかまえること。
四つ、相手の解釈はわからないからこそ、自分の想いは言葉を尽くして伝えきること。
相手が同じ気持ちで受け取ってくれるとは限りません。それでも、伝えることをやめてはいけないと思うんです。伝わらなかった責任まで、自分が背負う必要はありません。
組織にも起きている解釈のずれ
これは、家族や友人の間だけの話ではありません。会社の中でも、まったく同じことが起きています。
指示のつもりが「否定された」と解釈されたり、相談のつもりが「責められた」と受け取られたりします。解釈のずれが積み重なると、若手はやがて何も言わなくなり、静かに離れていきます。
大切なのは、正しい言葉を選ぶことだけではありません。相手のことを決めつけずにまず聴くこと。自分の感情の根っこを、先に自分でつかんでおくこと。そういう対話の文化がある組織は、人が言葉を飲み込まずにすみます。
伝え方を誰も教えてくれないまま現場に立たされると、人は消耗します。それは、心と体の健康経営の話でもあるはずです。
もし今、誰かにイライラしているなら、少しだけ立ち止まってみてください。
その怒りは、事実でしょうか。それとも、自分の中の解釈や思い込みでしょうか。
お互いを知れば、言葉はきっと優しくなります。声に出し合う文化ができれば、一人ひとりが自分らしく動き出せる。
そんな風土を、これからもっとたくさんの企業に届けていきたいと思っています。
次回は、今回の出来事から気づいた、トラウマとの向き合い方のお話をします。
声のcampus代表。想いを届ける司会・ナレーション、対話で人と組織をつなぐ企業研修・ファシリテーションを軸に、ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師、経営者インタビューメディア「コントリ」インタビュアーとしても活動中。ビジョンは「声の力で、誰もが自分らしくいきいき輝いて働く社会の実現」。人が定着する組織に必要なのは「理念の浸透」と「相互理解」。そのために必要なのが、聴く・認める・伝えるという”対話の文化”。一人ひとりが主体的に力を発揮し、互いに認め合い助け合える、強く持続的な組織をつくる。すべては、声から始まる。